読書ノート

2002年頃から書き貯めはじめた読書ノート。

 

読み始めの頃は年間20冊程度しか読めませんでしたが、いつしか年100冊読めるようになり、そのうち年間300冊を難なく読めるようになりました。読書も継続すれば、腕が上がるものです。

 

15年分の読書ノートからランダムに抽出して投稿しています。なおこれは書評とか感想文ではなくて、自分が本を読んで得た知識をノートにメモし続けた、個人的な記録です。


企業の成長について考える

◇FRカッペル著、冨賀見博訳『企業成長の哲学』ダイヤモンド社 を読んで

 

 企業に成長をもたらすものは何かと考えてみると、その一つは社員の力である。企業は社員の力を伸ばすために、社員に有意義な仕事をする機会を用意し、また、社員の士気を高めるような企業目標を設定していかなくてはならない。

 種々の管理技術は、人々の行動をサポートするものであって、それ自体が企業の成長をもたらすものではない。企業を成長させようと思うならば、やはり社員の成長ということを第一に考えていかなくはならない。

 

成長企業の人材戦略

◇佐藤博樹・玄田有史『成長と人材 伸びる企業の人材戦略』勁草書房 を読んで

 

 いかに優れた戦略を描いたとしても、それを実行する社員の能力や士気が不足しているならば、大きな成果には結びつかない。企業が成長を遂げていくためには、戦略の遂行に適合した社員の育成が欠かせない。
 社員を育成するにあたり、経営者はどのような姿勢で臨めばよいのか。同書は①経営者本人が確固たる人材育成観を持っていること、②価値観を形成する際、社員を個人として尊重したうえで働きかけをすること、③社員を信頼し、リスクを恐れずに任せる姿勢を示すこと、の3つを挙げている。

 ①については、経営者自身の経営体験や人生経験に基づき、確固たる信念を形成するに至った価値観のことを意味する。ただし、これは持っているだけでは足らず、社員に伝わるように自分の言葉で表現することが大切である。

 

社外から人材を獲得する

◇佐藤博樹・玄田有史著『成長と人材 伸びる企業の人材戦略』勁草書房 を読んで 

 

 企業の成長にとって優れた社員の育成は欠かせないが、育成には時間がかかる。そこで能力を持った人材を外部から獲得するという方法が考えられる。

 一般に、転職者は転職による損失のリスクを最小に抑えたいはずであるから、転職しようとする会社の情報を十分に入手しようとする。入手する情報として考えられるのは、①従業員数、会社の歴史、事業内容、賃金、休日等の雇用条件など外部から容易に把握できる情報と、②職場の雰囲気、職場環境、評価や昇進の見通しなど、外部から容易に把握できない情報がある。

 転職者の立場で考えると、②の情報が極めて重要である。この情報の入手が不十分であると、入社後に「思ったのと違う」ということが起きて、転職者にとっても会社にとっても不幸なことになる。反対に会社の立場で考えてみると、会社としては②に関する情報を開示することで、上記のようなミスマッチの不幸はある程度回避できる。

 ②のような情報は、転職者の入社後の働く意欲に大きく影響する。中途採用を成功させるためには、転職希望者が入社後の職場をイメージできるように、事例や従業員インタビューなどを用いてできる限り情報開示していくべきである。

 

長所を伸ばす

◇PFドラッカー著・ジョゼフAマチャレロ編、上田惇夫訳『ドラッカー365の金言』PHP研究所 を読んで

 

「できないことを並のレベルに引き上げるよりも、できることを超一流にするほうが易しい」

 ドラッカーの言うように、自分の短所を人並みレベルに引き上げるのは大変。まして短所を人並み以上に引き上げるというのは困難なことである。それに体力や時間を消耗するよりは、自分の長所を人並みないしそれ以上に引き上げることに時間を使いたい。

 職場で存在感を発揮しようとするならば、自分の長所を見出し、それを引き上げていくようにする。同じように、自社が業界で存在感を発揮しようとするならば、自社の長所を見出し、それを引き上げていくことに集中する。

 

内発的に動機づける

◇中原淳「企業内人材育成入門 人を育てる心理・教育学の基本理論を学ぶ」ダイヤモンド社を読んで

 

 仕事の動機付けについては、外発的動機付けよりも内発的動機付けのほうが効果的であるといわれる。報酬や評価など外部から与えられる動機付けが外発的動機付けであり、自身が仕事そのものに対して感じる楽しさややりがいへの動機付けが内発的動機付けである。

 会社の資源には限りがあるので、社員の給料を上げ続けることには限界がある。一方で、人間の欲にはなかなか限界がないので、高い報酬が出なくなった時に働く意欲が低下する。だから報酬によって動機付けを続けるのは難しい。

 一方で、その人のやりがいに訴える動機付けについては、限界がない。その人にとって新しい経験であり、挑戦的な仕事であれば、多少の困難も乗り越えようと努力する。自己の欲求を満たすための方法を自分で決定できるというなら、仕事へのやりがいは増す。

 経営者としては、給料の良さで社員のやる気を引き出そうとするのは限界があるので、挑戦的な企業目標を設定して、社員の働く意欲を引き出すようにする。現場管理者としては、企業目標を現場業務のレベルに落とし込み、現場の社員に対して日常的な目標ややりがいの持てるような仕事を用意して、内発的に動機づけるようにする。

 

一つのことに精通する

◇稲垣佳世子・波多野誼余夫著『人はいかに学ぶか』中公新書 を読んで


 一つのことに精通すると、3つの利点がある。第一に、自分の持っている知識を類推して対応を考えることができるので、他のことの理解力が高くなる。第二に、自分の持っている思考パターンを他の分野に転用できるから、あまり経験したことのないようなことでもとっさに対応できるようになる。第三に、一つのことに精通すると、知識の応用が利くような場合に新しく覚える知識の量を減らせるので、記憶のスピードが速くなる。これに対して、一つのことに精通するのではなく、いろいろなことを覚えようとあれこれ手を付けると、どれも中途半端になってどの知識も実戦で使えるレベルに達しない。
 しかしながら、 一つのことに精通するというのは大変なことだ。まずは一つのことに対して困難を乗り越え、最後までやり遂げるようにして、成功体験を獲得したい。成功した体験を持つと、成功への道筋がわかるようになる。成功への道筋を知ったうえで他の分野を知ろうとするなら、上述のような3つの利点が得られるので、新しいことを習得するのが比較的容易になる。これに対して、成功への道筋を知らずにいろいろな分野に手を出しても、どれも中途半端に終わることが多くなって、結局得るものがない。

 

学ぶ動機について

◇稲垣佳世子・波多野誼余夫著『人はいかに学ぶか』中公新書 を読んで

 

 興味のないことについて説明され、それを理解するというのはたいへんな苦痛である。反対に、現実の必要に直面し、自ら進んで学ぶということであれば、学びのモチベーションは高くなる。

 自ら目標を設定した場合には、困難に直面しても乗り越えようと頑張り抜くことができる。自ら進んで得た知識を持って現実の問題をうまく処理したならば、その喜びは極めて大きい。

 戦力を育てるときは、社員のモチベーションをうまく引き出すように工夫したい。

 

長期存続の要因

◇小川英次、岩田憲明、山田基成著『中小企業のマネジメント 名古屋経営の実証的研究』中央経済社を読んで

 

 わが国には創業百年以上の長寿企業が多く存在する。最も古い企業は1400年以上前から存在する企業もある。一方で経営環境は時代とともに変化していくので、企業が長期にわたり存続していくためには、環境の変化に適合していかなくてはならない。こうした長寿企業は、環境変化にいかにして適合してきたのだろうか。

 同書の中で、名古屋圏の長寿企業として東海三県の食品産業の企業を選び、事例分析を行っている。分析の結果明らかになったことは、まず長期にわたり存続してきた要因として、①時流を読む先見性、②新製品開発力の高さ、③独自の技術開発力の保有を挙げている。また存続のための課題として、①新規販売戦略の確立、②新市場開拓、③新製品開発を挙げている。

 これらを実現するための課題として、①本業重視の堅実経営を基本をすること、②顧客のニーズにこたえつつさらには新規市場を開拓する顧客第一主義、③こうした企業の経営理念を実現可能にする従業員の育成を挙げている。

 

製品開発の成功要因

◇河野豊弘『新製品開発戦略』ダイヤモンド社 を読んで


 製品開発には相当規模の支出を要し、しかも支出の時点で成功が確定されているわけではない。製品開発のための成功要因を踏まえたうえで、投資対象や努力の注ぎ先を慎重に選ばなくてはならない。同書は、過去の多数の事例分析に基づいて、製品開発の成功要因を明らかにしている。

視点 成功要因
 経営者の役割 ・製品開発の方向性を明らかにする、目標を設定する
・製品開発の組織をつくる、資源を割り当てる
・開発担当者を励ます、支援する
生産・販売能力との適合性 ・自社の他の製品とのシナジーがある
・自社の生産技術や設備との適合性がある
・自社のマーケティング能力や販路との適合性がある 
開発能力 ・必要な開発能力を保有している
・開発メンバーに独創性がある、熱意がある
・収集する情報の市場適合性がある
製品特性 ・大きな需要がある、需要が拡大している
・ユニークな製品である
・品質やコストの面で競争力がある

技術ブランド戦略

◇高井紳二・宮崎洋著『技術ブランド戦略 コアテクノロジーの分析・選択・展開・管理』日本経済新聞出版社 を読んで

 

 優れた技術や製品を持っているだけでは意味がなく、技術・製品を用いて事業を成功させていかなくてはならない。技術を事業として成功させるための有効な方法として、技術ブランド戦略がある。
 技術ブランド戦略は、「技術に裏打ちされた、統一的・一体感のある企業独自のコアテクノロジーが、外部世界(業界内外)でも連帯的・共有的に認知された結果として創出される(コーポレート)ブランド」と定義される。
 技術ブランドが確立されると、企業の保有する技術や品質に対する認知が高まり、その結果社内における技術と品質に関する意識の高まりが起こる。それにより、社内において、技術力に対する自負や誇り、高いモチベーションや働く喜びが形成される。また、社外に対する効果として、保有する技術の市場での価値を明確にPRすることができる。そのため市場において補完関係に立つ技術や製品、企業を見出すことができ、競合企業と比べて有効な技術連携を進めて行く上でのアドバンテージを得ることができる。
 技術ブランドは、企業の意思や活動によって形成される。企業は意図的に企業ブランドを構築していくのである。技術ブランドは、①製品や性能に対する表現、②創出プロセスにおける優位性の表現、③技術をビジネスモデルに組み込む、④市場における認知・浸透活動、⑤社会性やステークホルダーとの有益なつながりを内容として織り込まなくてはならない。

 

OJTの実際

◇寺澤弘忠著『管理者のためのOJTの手引き<新版>』日経文庫 を読んで

 

 OJTは、仕事に必要な知識や技能を職場でのトレーニングを通して習得させるものである。OJTの担い手は通常ベテラン作業者や管理者、先輩・経験者である。

 OJTを進めるうえで推進者が抱える問題として、同書では「仕事が遅い」「与えられたことしかやらない」「他人の意見を聞かない」「ムラ気である」「前向きな姿勢がない」「中途半端で最後までやらない」「段取りが悪い」「ミスがある」「自信がない」「仕事を抱え込む」「手抜きをする」が挙がっている。
 同書の指摘で重要なことは、OJTの問題で多いのは「その仕事に必要な知識・技能の不足」や「習得」自体ではなく、OJTに伴って生じる上司と部下の人間関係や、仕事の進め方、本人の意欲・ヤル気の問題であるということである。 

 

技術を伝える

◇畑村洋太郎著「組織を強くする 技術の伝え方」講談社現代新書 を読んで

 

 他者に仕事を教えるとき、教える側がいくら頑張ったとしても受け手のモチベーションが低ければ、受け手側に伝わらない。受け手側で吸収しない。この場合には教える側の「教えた」という自己満足が存在するだけで、仕事上は何の成果も上がらない。だから教える側では、受け手の立場で考えて、いかにして受け手が技術や技能を吸収するかに気を使わなくてはならない。
 同書は、技術の伝達には「伝えられる側の知識を吸収しようとする意欲に大きく関係している」とし、受入側に受け入れの素地を作ることの大切さを説いている。そして技術を伝えるためのポイントとして、「まず体験させろ」「はじめに全体を見せろ」「やらせたことの結果を必ず確認しろ」「一度に全部を伝える必要はない」「個はそれぞれ違うことを認めろ」の5つを挙げている。

 

知の伝達

◇野中郁次郎・竹内弘高著「知識創造企業」東洋経済新報社 を読んで

 

 暗黙知は特定状況に関する個人的な知識であり、形式化や伝達が難しい。これに対して形式知は、形式的・論理的言語によって伝達できる知識である。

 形式知は、マニュアル化やOJTによって伝達することができるが、暗黙知についてはマニュアル化やOJTによって直接伝達することが難しい。そこで個人の内面に帰属する暗黙知を何らかの形で表出化し、他者に伝える工夫が必要になる。たとえば経験の共有や職場での共働体験、共同思考等によって先輩から後輩へと伝達されていく。こうした活動を継続することにより、長期間を経て暗黙知か形式知化され、他者に伝達されていくのである。

 暗黙知の伝達には長期間が必要になるが、人から人へ伝わるときに新たな知恵や経験が加わるので、技術や技能が進化する可能性がある。技術や技能、ノウハウなどは単に他者に伝えるだけでなく、時代の変化に合わせて発展させていくべきである。暗黙知を形式知として表出化し、他者に伝えていくことによって、イノベーションが生まれる可能性が高まるのである。